2021年1月某日、その事件は地方競馬の笠松で発生した。笠松競馬に所属する騎手や調教師などの関係者に所得税の申告漏れがあったということで、名古屋国税局が動いたのだ。
この時件が起こる少しまえには競馬法違反容疑で県警のメスが入ったばかり。その矢先の不祥事だった。

「○○は人気だけど今回は脚が痛いよ。」

「○○は出走予定だけど鼻血が出ているよ。」

このように隠語を用いた内部情報を騎手や調教師などの仲間内で共有して、他人名義の銀行口座を使って馬券購入を繰り返していたことが発覚。関係者が馬券購入に関わっていたということが、明るみに出たというわけだ。
この事件に関与して1000万円超の所得隠しを指摘された『元調教師の男性(36)』は当局の捜査でこう述べた。

「負けることもあったが、収支が
マイナスになった年はなかった。」

要するに、結果に直結する『内部情報』があれば、競馬で勝ち続けることができる。そのことを、この不正事件が世に知らしめたのだった。